第78章 江ノ島観光
「ごちそうさまです!食べ歩きしたから少し心配してましたが全部美味しく食べられちゃいました!ふふ。太ってしまいそうです!」
杏「ご馳走様!君は少し太ったほうが良い!!」
「えぇー…。」
桜は眉尻を下げて『賛成しかねる』という意思表示をした。
それに杏寿郎も眉を寄せて応える。
杏「筋肉ももっと付けるべきだ!」
「筋肉は付きにくい体質なんです。諦めてください!」
杏「むぅ。ではせめて太らせなければならないな。」
そう呟いて丼ぶりをおかわりさせようとした為、桜は慌てて店の外へ避難した。
桜を1人にさせたくなかった杏寿郎も慌てて勘定をしてそれを追う。
案の定、少し目を離した隙に1人ぼっちの桜は2人組の男に絡まれていた。
杏寿郎は眉尻を下げて後退っている桜の肩を抱くと燃える瞳を男達に向けながら笑みを浮かべる。
杏「俺の妻に何の用だろうか。」
その笑顔の迫力に2人組は慌てて去っていった。
「ありがとうございます…。」
杏「離れないでくれ。本当に攫われてしまうぞ。この様な人混みの中で連れ去られたらと考えると背筋が凍る。」
「………はい……。」
どこか上の空の桜に杏寿郎は眉を寄せる。
杏「何を考えている。きちんと聞いていないな。」
「あっ、すみません…。杏寿郎さん、青年から大人の男性になったから 『妻だ』って言うと本当にそう思われるんだろうなって…思いまして……。」
杏寿郎は自身をそんな風に見ていたから上の空だったのだと知ると毒気を抜かれ、ただ『しっかりするんだぞ。』とでも言うようにぽんぽんと頭を撫でるとすぐに空気を切り替えた。