第78章 江ノ島観光
そうしてしばらく進むと大きな水溜りのようなものが見えてくる。
「あれ……なんだろう。水の中に岩がありますね。」
杏「うむ。あれは与謝野晶子の詩碑、詩を彫った石碑だ。『沖つ風 吹けば またたく 蝋の灯に しづく散るなり 江の島の洞』。明治44年、1911年…大正の俺が18歳の時に岩屋について詠まれた詩だな。」
杏寿郎はそう面白がるように言った。
一方、桜は与謝野晶子という教科書で習った人物と同じ時代を生きた経験のある杏寿郎を見て不思議な感覚を味わったのだった。
更に進むと洞窟らしさがグッと増す。
先程のようなパネルは無くなり、洞窟の両脇にただ柵が立てられているだけでそれは異世界感さえ感じさせた。
「ちょっと某テーマパークを彷彿とさせますね…!火山のアトラクションを待っている時の空間みたいです!」
杏「それは行った事があるのか。確かにそうかもしれないな。」
「はい!中学3年生…の時に……、」
杏「そうか。」
杏寿郎は桜がその後に起きた事件を連想したのだと気が付くと すぐに忘れさせようと桜を横抱きにした。
「えっ、わわ、」
杏「そろそろ疲れたろう!少し休むと良い!見ろ、分かれ道だぞ!!」
「あ、ほんとだ…。」
杏「どちらへ行く!!」
桜は『うーん』と唸った後、ピッと右を指差す。
杏「うむ、右だな!先程地上で言った場所へ着くぞ!!」
「あ!あの龍の下がこの先なんですね!」
桜がそう言って嬉しそうに笑うと杏寿郎は少しほっとしながら微笑み返した。