第78章 江ノ島観光
杏「桜!あんまり動くんじゃない。もう今日は帰ろう。下までは俺が運ん、」
「よ、横顔に見惚れていただけです!」
桜が振り返って更に赤くなりながらそう言葉を絞り出すと 杏寿郎は目を丸くさせながら桜の額や頬に手を当てる。
杏「確かに体調を崩した訳ではなさそうだな。君は俺の顔をただ見るだけであそこまで頬を染めるのか。」
「あ、……あちらにも何かあります!行ってみましょう!…………はやくっ」
そう言いながら杏寿郎を引っ張ろうとしてもおかしいくらいにビクともしない。
チラッと見上げると杏寿郎は嬉しそうな笑みを浮かべていた。
杏「そういえば一目惚れをしたとも言っていたな!だが君が惹かれたのは瞳の筈だろう。先程は目を瞑っていた。何故頬を、」
「杏寿郎さん…っ」
桜は引っ張れそうにない事を認めると杏寿郎の手を両手でぎゅっと握る。
「そのお話は後でしましょう!今されれば本当に熱を出してしまいそうです…!」
杏「それは良くないな!」
杏寿郎は一生懸命に見上げる桜の頭を謝るように撫でると柔らかく微笑んだ。
好奇心が削がれた穏やかな表情に桜の体の力が抜ける。
(たすかった……。)
杏「桜が見付けたのは龍宮だな。」
「わだつみのみや…?」
杏「君の御朱印帳のモデルだ。」
「龍!わあ!」
見れば確かに "龍宮大神" と書かれた旗がたくさん立っている。
近付いていくと狛犬が必要が無い程迫力のある龍が社の屋根に乗っていた。