第78章 江ノ島観光
そうされる度に杏寿郎の口角が上がった口がむずむずと動く。
杏(今度は何をしているんだ。きっと意味など無いのだろうが…。)
チラッと見下ろすと桜は今は両手で杏寿郎の手を真剣な顔でにぎにぎしていた。
杏寿郎はそれからパッと目を逸らすとグッと眉を寄せる。
杏(……愛いッ!!!)
奥津宮は人が比較的少なく、その静かな雰囲気と荘厳さが絶妙にマッチした社だった。
杏「多紀理比賣命は三姉妹の中で一番上の姉なんだ。そして安らかに海を守る神だと言われている。此処の静かな雰囲気はまさにそれが表れているようだな。」
「確かに…なんだか落ち着きます……。」
そう言いながらお賽銭をし、鈴を鳴らして二礼二拍手する。
そして手を合わせるとそっと目を瞑った。
(また江ノ島に来たら必ずここまで足を運びますね。海を守ってくれてありがとうございます。)
最後に一礼すると横でまだ目を閉じている杏寿郎を見つめる。
(………………………………。)
思わずその横顔に見惚れていると瞼がスッと上がり、綺麗な色の瞳が自身を捉えた。
杏「……体調を崩したのか。顔が赤い。やはり歩かせ過ぎたな。」
杏寿郎が心配そうに頬へ手を伸ばそうとした為、桜は慌てて杏寿郎の腕を掴み 後ろの参拝客に場所を譲った。