第77章 ※天元の入れ知恵と小旅行への出発
杏「君なら大丈夫だ!それに俺達の子なら君の真剣な言葉をきちんと聞いてくれるだろう。そして子育ては君1人でする事じゃない。勿論クワガタは俺に任せてくれ。」
それを聞くと桜はパッと顔を上げて明るい表情を見せる。
その切り替えの速さを杏寿郎は愛おしく思った。
「約束ですよ!」
杏「うむ、約束する。なので君も……なるべく俺を忘れないと約束してくれ。」
「……え…………?」
(忘れない……って…?)
ピンとこなくて桜が困った顔をすると、杏寿郎も困ったような笑みを浮かべる。
杏「前に『子が産まれたら俺を構わなくなるのか。』と君に訊いた。その時 君は微笑むばかりで否定しなかったろう。子供は欲しいのでなるべくは我慢しようと思っているが……、だが少しだけでも…、」
「か、構いますよ!とっても構います!たぶん杏寿郎さんの嫉妬が嬉しくて可愛いかったから笑っちゃっただけだと思います…!!」
寿命が尽きるまでの長い間勘違いをしたままだった為か、杏寿郎は少し呆けた後 ほっとしたように眉尻を下げた。
杏「こんな事を言っては父親失格かもしれないが……いくつになろうとも俺は君の一番の男でありたい。」
目を閉じ、真剣に願うようにそう言うも桜が返事を寄越さない。
ただただ胸の上で顔を伏せて震えている。