第77章 ※天元の入れ知恵と小旅行への出発
杏「クワガタを見付けた小学生のような顔をしているぞ。」
杏寿郎も杏寿郎で桜の表情を楽しんでいた。
桜は杏寿郎にそう言われるとくすくすと笑い声を漏らす。
クワガタを見付け喜んでいる幼い杏寿郎を想像したからだ。
「ふふ、私は男の子じゃないのでクワガタは探しませんでしたよ。」
杏「よもや!カブトムシやクワガタを探すのは夏の楽しみの1つだろう!」
「うーん…、私は花を愛でる方が好きでした。虫は……こう、脚がわきわきと動くのが怖いです…。」
そう言いながら桜は指をわきわきと動かす。
その時の表情が心底嫌そうだった為、杏寿郎は声を上げて笑った。
杏「前にも言ったが煉獄家は男が産まれる確率が異常に高い!虫からは逃げられないぞ!!」
その言葉と共に桜の眉尻は分かり易く下がる。
そして縋りつく様に杏寿郎の胸に置く手をぎゅっと握ると杏寿郎に顔をグッと近付けた。
「そ、それは杏寿郎さんが手伝ってくれますよね…?つ、掴んだりお世話をするのは、私……とても…、」
杏「君がそんな愛らしい反応をすれば子供は君の服の中にクワガタを入れかねないぞ。」
そう言われると桜は目をぎゅっと瞑ってぞくぞくっと身震いをする。
「ふ、服の中……。私、ちゃんと男の子育てられるのかな…。高校生にもなめられちゃうのに……。」
桜がそう自信を失くしたように呟いて顔を伏せると杏寿郎は少し焦ったように目を見開いた。