第77章 ※天元の入れ知恵と小旅行への出発
杏「…っ、桜、わざとか。」
「…………はい。杏寿郎さんの話を聞いて本能が疼いてしまったみたいです。」
杏「………………………。」
『それ程 体も望んでいるのならもう、子供を作ってしまえば良い。』と言いたくなったが、まだ自分達が夫婦ではなくただの恋人であることを思い出した杏寿郎は口を噤んだ。
桜は黙ってしまった杏寿郎の心の内を察すると 杏寿郎の頭を抱き、謝るように撫でる。
「私……杏寿郎さんをずっと我慢させちゃってますね。もうずっとずっと待たせてたのに。」
杏「あとたった6年だろう。我慢のうちにも入らない。それに結婚だって俺達2人だけで決められないからこうなっている。君の責任ではない。」
「そう、なのですが……。杏寿郎さんが孤独に過ごした日々を想像すると父が駄々をこねる子供のように見える時があります。杏寿郎さんの言う通り……、籍をすぐ入れない理由が見当たらないんです。」
杏寿郎はそれには何も答えず桜の胸をもにっと揉んだ。
「えっ!?……杏寿郎さん今は、」
杏「うむ!これは答えが出ない類の話だな!この話はこれで終いだ!」
「そんな、気持ちの切り替えがまだ…んっ」
桜は酒の香りがする杏寿郎に舌を入れられると結局 素直にそれを受け入れる。
長く長く舌を優しく絡めた後 杏寿郎は漸く顔を離した。
杏「……俺は君のお父様ともきちんと家族になりたい。皆が納得してから前へ進みたい。なので今はどうもこうも出来ない。お父様の気持ちが追いつくのを待つ事しか出来ない。」
「……そう、ですね…………。」
杏「なのでまだ孕ませてやる事は叶わない!もう少し待っていてくれ!!」
杏寿郎は桜の腹に向かってそう言い聞かせるように言うとぽんぽんと優しく撫でた。
すると桜はパッと顔を赤らめた。