第77章 ※天元の入れ知恵と小旅行への出発
杏「もう礼も無しだ!俺がやりたくてした事だろう!」
あまりにも桜が礼を言うので杏寿郎はとうとうそう言い放った。
「でも杏寿郎さんが優しくて…この気持ちはどこへぶつければいいんですかぁ……。」
桜が部屋まであと少しの所でいよいよ泣き出しそうになると 杏寿郎は桜を横抱きにして大股で歩き、急いで部屋に入った。
杏「桜、こっちを向いてくれ。」
杏寿郎は廊下では周りから見えないように胸に隠していた桜の泣き顔を覗き込む。
そして久しぶりの桜の泣き顔を見るとぞくぞくとして身震いをした。
しかし、その感情を抑えながら努めて優しく涙を拭っていく。
杏「俺がああしたかったんだ。君が責任を感じる必要は全く無いんだぞ。泣き止んでくれ。」
杏寿郎はそう言うとしゃっくりをしてしまっている桜に敢えて長いキスをし始めた。
キスをしながらしゃっくりをしてしまう度に桜の頬は染まり、残った涙と合わさると杏寿郎好みの顔になる。
杏「むぅ、俺のキスでは驚かないか。なかなか止まらないな。」
そう言って笑うと桜は益々赤くなってしまった。
「お水を飲ん…ひっく、飲んできます…!」
桜は杏寿郎の腕の中から出るとパタパタと走って冷蔵庫を開け、中に入っているミネラルウォーターを手に取る。
飲んでる最中もしゃっくりをし、水を溢しそうになったり けほけほと咳き込んだりと慌ただしくしていると杏寿郎が側に寄って背中を撫で始めた。
「杏寿郎さん、あり……っく、ありがとうございます。」
杏寿郎は『気にするな。』と言うと熱く大きな手のひらで桜の背中を撫で続けた。
杏(愛らしいがこれは少し苦しそうだ。早く止まると良いのだが。)
先程とは異なり、心から心配している杏寿郎の手は努めなくても自然と優しい動きとなった。