第77章 ※天元の入れ知恵と小旅行への出発
杏「………………暗くて海など見えないぞ。」
「あ!音とかで見た気になっていました!」
杏寿郎はその感想に再び笑うと桜の額にキスを落とし、『風呂へ行こう。なかなか面白い風呂らしいぞ。』と言った。
―――
(こ、これは想像を超えていたわ…!)
その時間、女風呂になっていたのは洞窟のような風呂だった。
文字通り洞窟に湯が張ってあるような風呂である。
(わくわくする…。杏寿郎さんと入れたらもっと良かったのだけれど……。)
そう思いつつも桜はたっぷりと湯を堪能してから風呂を出た。
そして長風呂で火照った頬のまま髪を念入りに乾かす。
(杏寿郎さんの…男性のお風呂はどんなだったんだろう。早く聞きたい。)
そんな事を思いながら女風呂を出ると、杏寿郎が腕を組んで微笑みながら立っていた。
それを見るとのんびりしながら出て来た桜は眉尻を下げる。
「ご、ごめんなさい!待ってくれてたんですか!?」
杏「全くもって謝る必要はない!気にせず楽しんでもらいたくてわざと君に言わずに待っていたのでな!楽しめたか?」
(そうだ…杏寿郎さんが私を1人で歩かせる筈がない…。)
「杏寿郎さん、本当にすみま、」
杏「湯はどうだった。それだけ聞きたい。」
「あ…、」
桜は俯いてしまっていた顔を上げると温かい笑みを浮かべる杏寿郎に少し泣きそうになりながら『とっても良かったです。』と言い、謝る代わりに何度も礼を言った。