第77章 ※天元の入れ知恵と小旅行への出発
「杏寿郎さん…、」
杏「む、此処だな。」
そう言って杏寿郎は坂の途中にあった旅館へ桜を導く。
立派な佇まいとその立地の良さから桜は宿泊費が安いものではないと悟った。
「まさか…、」
杏「うむ。今日は此処に泊まるぞ。心配しなくて良い。君の着替えはきちんと持ってきてある。」
そう言うと先程から持っていたバッグを桜に見せる。
(あ、あれ私の服だったんだ……。)
杏「丁度キャンセルが出たらしいのでよく分からないまま慌てて予約したのだが水族館のチケットも付いてきた。明日行ってみよう。」
呆けてしまっていた桜は杏寿郎にするりと髪を梳かれると我に返った。
「きょ、じゅ……、」
戸惑い、驚いていたが 杏寿郎の楽しそうな顔を見ると再び全てがどうでも良くなっていく。
そして桜はとうとう眉尻を下げたまま微笑み返した。
「……とっても、とっても嬉しいです。ありがとうございます、杏寿郎さん。」
―――
「わ……、海が見える……!杏寿郎さん!」
杏「ここは島だからな。」
案内された部屋ではしゃぐ桜を見て杏寿郎は眉尻を下げて嬉しそうに笑う。
そして窓際に立つ桜の隣に寄ると頭を撫でて一緒に景色を眺めた。