第77章 ※天元の入れ知恵と小旅行への出発
杏(いや、キスはキスだ。キスと呼ぶのは正しい事だ。俺がああ言ったから宇髄の言う事を全て忘れてくれたのだろう。従順で健気で愛らしいではないか。)
杏「……おいで。」
杏寿郎は何とか自身の中で踏ん切りをつけると桜を抱いてリビングのソファに座らせる。
そしてコップ2つと冷えたお茶を持ってくると2人の為に注いだ。
杏「俺も君もなかなかに酔っている。少し休もう。特に君は先程まで様子がおかしかった。体に変化はないか。」
桜は礼を言ってお茶をこくりと飲むと少し眉を寄せて首を傾げる。
「宇髄さんと飲んでいる時、ある時から頭がぽーっとしだして……お酒のせいかなって思ったんですが、なんだか感覚が違ったような、」
杏「うむ。彼には二度と近付かないでくれ。」
一方、2次会に参加した教師陣と蜜璃ははまた別の店で飲んでいた。
天「あー今頃煉獄は俺の事を崇め称えてるんだろうな。」
実「何したんだァ?」
天「桜が可愛らしい呼び方を全く知らなかったから教えてやったんだよ。」
蜜「呼び方……ですか?」
小「甘露寺、聞くな。」
義「一ノ瀬はちゅーを知らなかった。」
話を続けようとした義勇の鳩尾に小芭内の肘が入る。
義「……っ、俺も、言ったことがない。」
実「要らねェんだよ、その情報はァ!!」
行「まあ、珍しいのは確かだろう。」
行冥が冷静にそう言うと実弥も小芭内も『たしかに』という顔をした。
一方、蜜璃は口に手を当てて目を大きくさせていた。
蜜(えっ、えっ!?じゃあ……キスって言ってたのかしら…!桜ちゃん、大人っぽいわ……!!)