第76章 始まるGW
勇之は意気消沈していた様子からは立ち直り、今は会話に参加しようと口をぱくぱくさせていた。
「……そうだ、お義父さまは道場で剣道を教えられていらっしゃるのですよね?我が家も父と……弟がやっていたんですよ。」
瑠火が弟と聞いて首を傾げると千寿郎が慌てて今はもういない事を耳打ちする。
槇「へぇ!そうなんですか!一時期は門下生が減って大変だったのですが、杏寿郎が教師を始めて剣道部の顧問になってからはその妹、弟が私の道場へ習いに来てくれるようになりまして 今では随分と賑やかになったんですよ。」
勇「剣道部の顧問を…。私も……、今は…大学で剣道部の顧問をしています。」
槇「…………そうなんですね。それは良い。」
槇寿郎はその言い淀み方から ユキが言っていた "父親の知り合いの若い男達からの暴行" が剣道部より前の顧問を務めていた部活の生徒によるものである事を悟った。
勇「……そうだな、杏寿郎くん。桜が欲しければ私と剣道で勝負しなさい。」
「お、お父さん怪我するよ…。」
杏「分かりました!!!」
一時でも呼吸を使えてしまった杏寿郎を知っている桜は既に勝負がどう決まるのかを悟ってしまっていた。
それからも勇之以外の皆は和やかに話をし、勇之と杏寿郎の桜を懸けた試合は10月に行う事となった。
由「楽しかったです。またお会いしましょうね。」
由梨がふわっと笑うと槇寿郎と瑠火、千寿郎は桜の笑みと重ねて微笑んだ。
杏「今日はありがとうございました。また会える日を楽しみにしています。」
「本当にありがとうございました。」
そうして桜が杏寿郎と共にお辞儀をするだけで勇之は死にそうな顔をする。