第76章 始まるGW
杏「うむ!何やら随分と楽しそうだな!暗くなる前に帰るんだぞ!!」
「こ、こんばんは…!」
女生「はい!一ノ瀬先生お綺麗ですね!」
女生「今から帰るところです!和服着るんだあ…すごく似合ってます!」
杏寿郎と桜の様子が気になる女生徒達は案の定 挨拶だけでは済まさず、すぐにその場を去ろうとしない。
杏「ああ、明日両家の顔合わせがあるのでな。それの為に仕立てたんだ。」
「きょ、煉獄先生……っ」
桜は小声で諌めるように杏寿郎を呼んだが、当の本人は爽やかな顔で振り返り 微笑みながら小さく首を傾げた。
杏「本当の事だろう。それにもう俺達が恋仲なのは周知の事実だ。」
「そうだけど、そうじゃなくて…、」
女生「えー!!」
女生「顔合わせ!?もう結婚されるんですか!?」
「しない!しないよ!!」
杏「する事は随分昔から決まっているぞ!!!」
杏寿郎の答えに女生徒達が嬉しそうな声を上げると桜はどうにも勝てそうにない事を感じ、着替えに店の奥へと引っ込んだ。
(杏寿郎さんが言うことも分かるんだけど、生徒に知られるのって何だか恥ずかしく感じちゃうのよね…。私が気にし過ぎなのかなあ。)
桜が出てくると女生徒達は桜に挨拶するのを待っていて、『一ノ瀬先生、さようなら!明日頑張ってください!』と言って帰って行った。
桜はわざわざ待っていてくれた事を嬉しく思うとパッと表情を変えて微笑みながら『気を付けて帰ってね!さようなら。』と声を掛けた。
そして2人が見えなくなると杏寿郎は桜が持っていた色留袖の袋をさらりと取り上げて空いた手を握る。
「あっ、ありがとうございます。仕立てて下さった事自体も…本当にありがとうございました。瑠…、お義母さまお着物好きそうですよね。話が弾むといいなあ。」
素直に礼を言う桜に杏寿郎は嬉しそうに微笑んだ。
それからスーツも受け取ると、2人は帰路へついたのだった。