第76章 始まるGW
「…………えっ!?聞いてたの……?ま、待って!結婚はまだ先なの!!次の春までは時間を……っ」
桜はハッとすると再び口を手で覆う。
音楽室を振り返っていた桜が横に来た杏寿郎をチラッと見上げると なんとも嬉しそうな顔をしていた。
杏「しっかりと職務を全うしていれば職場恋愛は自由だ!何も隠す必要はないだろう!!」
「うぅ……。」
恥から赤くなる桜の耳に『 "桜" 、 "杏寿郎さん" って呼び合ってた!』、『次の春に結婚するって!』といった嬉しそうな声が入ってくる。
(恥ずかしすぎる…これからきちんと指導できるかな……。)
桜が更に赤くなって蹲ると 杏寿郎は桜をひょいと持ち上げて楽しそうに笑いながらその場を去った。
―――
「両家顔合わせも一大イベントですが、私 鬼殺隊同窓会が楽しみで仕方ないです。」
桜はまだ学生であるしのぶや無一郎、継子組とプライベートで会えていなかった。
蜜璃に至ってはちらりとも会えていない。
予定を合わせて合わせて、やっと集まれる日が明日の昼からだったのだ。
杏寿郎と桜は両家顔合わせも昼な為 少し遅れて行くことになっている。
杏「俺も楽しみだ。記憶が戻ってからすぐ俺は宇髄曰くポンコツになってしまっていたのでな、特に職場の皆以外とは会わなかったんだ。」
その原因に心当たりがあった桜は小さな声で『すみません。』と謝った。
杏「これからどこへも行かないと約束するのであればもう謝らなくて良い。」
「行かないですよ。やっぱり杏寿郎さんは特別でした。……すぐ、すごい力で惹かれましたもん。」
桜は少し心外そうな声を出した。
すると杏寿郎は微笑んで再会した時の事を思い出す。
杏「ああ、そうだな。目を見て分かった。君はすぐ俺に好意を持ってくれていた。」
「そんなに分かりやすかったですか…?」
杏「うむ!目がきらきらとしていて頬も赤くなっていた。」
「そうだったんですね…。」
そう言う桜はまた赤くなっている。
杏寿郎は信号で止まるとその頬に手を伸ばし、スリッと撫でた。