第76章 始まるGW
一方その頃、剣道場は地獄絵図と化していた。
杏寿郎の指導はいつもより更に熱く、普段やっと付いてきていた生徒は早々から白目をむいている。
杏「どうした!!君ならまだやれるだろう!!!吹奏楽部も頑張っているぞ!!!」
生徒(……吹奏楽部…………?)
そこで剣道部員達は今日の杏寿郎の行動が誰に感化された結果であるのかを悟った。
(……うっ!…………なんだろう、悪寒が……。)
剣道部員達に恨めしく思われた桜はぶるっと身を震わせた。
それから合奏の時間が近付いてくると次第に生徒達がパート単位で集まり始め、音楽室は様々な音色とメロディーに包まれる。
(この感じ、好きだなあ。合奏で出来てなくてもこの時は吹けてるって子も結構いるな…。メンタルもタフになれると良いんだけど…。タフなメンタルかあ……。)
桜は真っ先に杏寿郎の顔を思い浮かべた。
そして少しだけ微笑む。
(杏寿郎さんは例外かな。経験した事が大きすぎて参考にならないや。)
「…………はい!時間です!!」
桜が手をメガホンにして音の洪水に負けないように精一杯大きな声を出すと、皆パッと楽器を鳴らすのを止めて返事をする。
陸「よろしくお願いします!!」
「「「よろしくお願いします!!!」」」
そう挨拶されると桜は『うん、頑張ろう。』と言って緊張感を伴う筈の合奏に似つかわしくない笑顔を見せた。