第76章 始まるGW
杏(…………桜…?生徒達と一緒に走っているのか。あの体では体力が保たないだろう…。)
杏寿郎の懸念通り、桜の体は酷く動かし辛く 桜はユキの体が恋しくなった。
しかし命のかかった体力作りを続けてきた根性だけは誰にも負けない。
桜はヘロヘロになりながらも気合いだけで足を進め、又、見るからに体力の無さそうな桜の頑張りに生徒達も感化された。
杏(うむ、良い顔をしている。後で褒めてやらねばな。立派な教師だ。)
杏「よし!!今日の素振りはいつもの3倍だ!!気合いを入れろ!!!」
一方、常に杏寿郎の気合いの入りっぷりに参っている剣道部員達は声にならない悲鳴を上げた。
「……よし…、みんな、よく頑張ったね…!」
桜は有言実行して走りきり、最後の生徒が帰ってくるとふわあっと笑った。
そして達成感に満ち溢れる生徒達を連れて音楽室へ戻ると『倒れちゃうから全部飲みきってね!』と言って指揮台の脇に置いてあったクーラーボックスから人数分のスポーツドリンクを取り出した。
生徒達は大きな声で礼を言うとそれを一気に飲み干していく。
桜もそれを見て微笑むとこくこくと飲んでいった。
「よし!それじゃあ合奏までの間パート毎に空き教室へ行って、筋トレ、各々の練習、課題を頑張ってください。楽器を吹く前に歯磨きするのも忘れないでね!」
「「「はい!!!」」」
響凱は人知れずずっと音楽室の隅っこに居たが、その生徒の元気な声を聞くとパーカスの方へ恐る恐る足を進める。
そして鼓の経験から手で叩く楽器についての指導をこわごわと始めた。
(響凱先生…来ていたんだ……。)
一生懸命に生徒と関わろうとする響凱を見て桜はにこっと微笑んだ。