第76章 始まるGW
「では…あと3分……微妙にあまっちゃいましたが今日の授業はここまでです。宿題もやりつつゴールデンウィークを楽しんでね。」
桜がそう言って微笑むと生徒は声を揃えて返事をした。
4月も終わりになると少しだけ校内の雰囲気も落ち着いてくる。
そんな中やってくるゴールデンウィークは再び生徒達の心を浮つかせた。
廊下で挨拶をしながらすれ違うそんな生徒達の笑顔を見て桜は微笑ましそうな表情を浮かべる。
(私は部活があるからゴールデンウィークは5連休という訳にはいかないけれど、杏寿郎さんも同じ日程だったのが救いだなあ…。)
生徒「一ノ瀬先生、おはようございます!!」
「おはよう。」
すれ違った吹奏楽部の生徒を桜は立ち止まって振り返った。
(ううん、夏のコンクールまであと3ヶ月だもの。『5連休楽しみたかった。』なんてそんな子供っぽい事は思っちゃいけない。責任持って指導しなきゃ…!)
そう思うと自身が顧問ではなく副顧問である事を失念している桜はグッと握りこぶしを作って気合いを入れたのだった。
厳しい部活で鍛えられた桜であったが、いざ教える立場となると厳しくは出来なかった。
それでも生徒達は桜をなめたりしなかったし、一生懸命な桜の指導に同じく一生懸命に応えた。