第75章 とある日曜日
杏「桜。」
随分と上がり、頂上近くなった所で杏寿郎が窓についていた手を離すと桜もその腕を追うように杏寿郎を振り返る。
「……はい。」
杏「観覧車の有名なジンクスを知っているか。」
「…?…………いいえ。」
首を傾げながらそう桜が答えると 杏寿郎は少し残念そうに微笑んだ。
杏「そうか。君からしてもらいたかったのだがな。」
桜は杏寿郎の表情の理由を知りたくなり、スマホを取り出すと両手で持って杏寿郎に見せる。
「い、今いじっても良いですか?」
杏寿郎は少し驚いた顔をした後 柔らかく微笑んで頷いた。
それを見ると桜は急いで検索する。
(えっと……観覧車の…ジンクス…。あった。……『頂上で……キスをしたカップルは…別れない』……え?頂上って……、)
桜はバッと視線を上げて自分達の位置を確認する。
すると丁度 頂上を過ぎようとしている時だった。
「……っ!!」
杏「む"っ」
桜は間に合うようにと慌てて杏寿郎にキスをしたが、その性急さは滑り込みセーフと引き換えにムードを完全に壊してしまった。