第75章 とある日曜日
「ず、ずるい……それ…その表情、わざとですよね……。」
杏「…む………何がだろうか……?」
桜が そーっと瞼を上げると杏寿郎は困惑したような顔をしている。
(あれ……?本当にあんな顔になるまで必死になってたの…?)
桜が困ったように見つめていると杏寿郎は次第にまた縋るような切ない表情になっていく。
普段は凛々しい太い眉は頼りなくハの字になり、瞳には燃える炎が見当たらない。
(………………う……、)
「……こ……今回だけですよ…………。」
そう言うと杏寿郎はパッと顔色を明るくさせて桜を抱き締めた。
杏「ありがとう!!……すみません!!こちら全種類を頂きたい!!!」
静かな建物内に杏寿郎の元気な声が響いた。
そうして杏寿郎と桜は他の店も回ったが、杏寿郎は別に浪費家という訳ではなく ただただ桜に似合うものだけに反応するようだった。
さすがにルームウェアを買った後はしつこく食い下がったりはしなかったが、桜はクローゼットにあった洋服の数を思い出してこの先が少し不安になったのであった。
杏「うむ、そろそろだな。桜。」
「……?…………はい……。」
桜は杏寿郎に微笑みながら手を引かれて建物を出た。
そして杏寿郎の行き先を、離れてても分かるその行き先を見て目を輝かせる。
「観覧車!!!」
杏「うむ!ベタだがデート初心者の俺達にはピッタリの締めだろう!!」
「はい!とってもわくわくです!!」