第75章 とある日曜日
予約していた車は家族用のワゴン車だった。
杏「気が早いが大きな車を運転してみたくてな!」
そう言う杏寿郎はずっと瞳を輝かせていている。
その表情から少し年齢よりも幼く見え、桜はそれを微笑ましく思った。
「ふふ、良いお父さんですね。」
杏「……君にお父さんと呼ばれるのも悪くないな。」
「私はいつまでも桜って呼ばれたいです。」
杏「承知した!!」
2人はワゴン車に乗るとやはり家族を意識してしまうからか再び子供の名前の話をしたが、相変わらず名前は決まらなかった。
そうして笑い合いながらコースを2周し終えると杏寿郎は車を止める。
杏「やはり大きさが違うと運転しづらいな。慣れておかなければ…。」
杏寿郎は車から下りるとそう呟き、スタッフに挨拶をした。
そして桜の手を引くと夕食を食べようとレストラン街を目指した。
「ごはん何にしましょうかー。」
杏「むぅ。寿司…は昼に食べたので夜は別のものにしよう。……これはどうだ。」
案内板で杏寿郎が指差したのは牛たんの店だった。
桜はすぐに頷く。
「決まったらますますお腹空いちゃいました!」
杏寿郎は『確かに俺もだ!』と笑うと手を握って店に入った。
出された料理はとても美味しく、杏寿郎も桜もあっという間に食べてしまった。