第75章 とある日曜日
「…………?…」
杏「思い返してみればスパ施設もここも、ゲームもゲームセンターも、全部宇髄が俺を道場から引き剥がして与えてくれた経験だ。遊びに誘ってくれた友人は沢山いたが俺は稽古をしたかったし、集中すると耳に音が入らなくなってしまうので 力尽くで俺を引き摺ることが出来る宇髄としか思い出がない。」
「あの宇髄さんが……!へえぇ…少し意外です…。」
(もっとドライな人かと思ってた。杏寿郎さんと仲が良いんだな……。)
杏「話が逸れたな!車を運転する家庭用ゲームがあるのだが、それを運転座席のような椅子に座って出来るコーナーがあるんだ!!それと似たような物がゲームセンターにもあったので先程のように訊いた!」
「へええ…!楽しそうです!それにゲームなら出来るかも!!」
杏寿郎は目を輝かせる桜に微笑むと頭をぽんぽんと撫でた。
桜は初め張り切っていたが、結果は散々だった。
そのゲームはただ運転するものではなく、当然カーレースである。
先にゴールした杏寿郎は横の桜の画面を見て目を丸くした。
杏「桜…どうして逆走をしている。」
「えっ……でも、あれ…………?さっきぶつかっちゃって、あっ、」
桜が派手にコースアウトして壁に激突するとゲーム内の車体は律儀にボコボコになる。
そして軽いパニックになっている桜はバックしようとしながらもただただアクセルを踏み続けていた。
杏寿郎は新しく見付けた桜のポンコツぶりに抑え気味の笑い声を漏らすと席を立って優しく教えてやる。
杏「こちらが正しい方向だぞ。もう独走状態だ!気持ちが良いな!!」
「うぅ……。」
それから桜は何度も危険なドライビングをしながらやっとゴールした。
「車、こわい……。」
杏「これはレースだからな!次は本物の車で安全な走行をするぞ!」
「え?……あ!試乗ですか?」
杏「うむ!!」
杏寿郎が楽しそうな眩い笑顔を向けると桜も嬉しくなってふわあっと笑顔を浮かべた。