第75章 とある日曜日
杏「桜はやはり免許を取らない方が良いと証明されたな。」
「…………う、うぅーー…。」
杏「心配しなくとも俺がどこへでも連れて行くと約束する。……おいで。」
杏寿郎は泣きそうな赤い桜の顔に堪らなくなると 人気のない場所で桜の手を引き、体を寄せた。
そして慰めるように優しく優しく撫でながらも目を細めて嬉しそうに桜の赤い顔を愛でる。
当の桜は恥から視線を横に逸していて杏寿郎のその顔に気が付けなかった。
杏(……やはり堪らないな。)
杏「誰にでも向き不向きがある。桜には他に沢山の長所があるだろう。列に並んでいた人の中にも嘲笑をしている者は1人もいなかったぞ。」
そう言われ桜が杏寿郎を見上げると、そこに在ったのは 只ひたすら優しい大人の余裕がある微笑みだった。
桜はその穏やかな笑みに恥を溶かしていく。
「ありがとうございます……。」
杏寿郎の困った性癖がそのままである事を知らない桜は心底安心したようにそう言うと杏寿郎の胸に顔を埋めたのだった。
杏「君はゲームはするのか?ゲームセンターに行ったことはあるか?」
「いえ…、特にしませんでしたし、ゲームセンターにも行ったことがないです。」
杏「そうか、俺も特に興味は無かったのだが友人に……、」
そこまで言って杏寿郎ははたと動きを止める。