第75章 とある日曜日
「杏寿郎さん、おはようございます。」
杏「む…おはよう、桜。君と眠ると快眠できるのは変わらないようだな。良く眠れた。」
エプロン姿の桜は寝癖のついた杏寿郎の髪を愛おしそうに梳くと額にキスを落とす。
すると杏寿郎は上体を起こし、桜の手を引いて抱き寄せた。
杏「朝のキスは俺の役目だぞ。」
「そんな決めごとしてませんよ…?」
桜は杏寿郎の腕の中に一緒に収まってしまった腕をもそもそと動かして杏寿郎の背中に回した。
すると熱い体温が寝起きであるが故に更に熱く感じる。
「………杏寿郎さんの体温だ。」
杏「当たり前だろう!」
杏寿郎はそう言って笑うと桜をまた横抱きにして寝室を出る。
そして出来上がっている朝食を見て目を細めながら『相変わらず美味そうだ。』と言ってから桜を椅子に下ろし、顔を洗いに行った。
杏「頂きます!!」
「召し上がれー。」
杏寿郎はこの当たり前になったやり取りから恋人以上の関係を感じてしまい、小芭内に指摘された『関係の有耶無耶』についてしばしば悩んでいた。