第75章 とある日曜日
杏「いや、特別な事はしていない。だが証拠の画像が出てしまってからは 噂というあやふやな物が話題という確かな物へと変わってしまったな。俺のネクタイピンもどうやら恋人を思わせる判断材料の1つだったようだ。」
「そ、そうだったんですね…。私うっかりしてた……。」
いけしゃあしゃあと予測出来ていた事を言う杏寿郎に桜はまんまと引っかかり反省するように眉尻を下げた。
杏「こちらがそうならば君の腕時計も疑われたのだろうか。」
「そ、そうなんです…!初日から彼氏にもらったのかって訊かれて……。」
杏「外すか……?」
杏寿郎がここぞとばかりに寂し気で窺うような声を出すと桜は思わずぶんぶんと勢い良く首を横に振った。
「外しません!とっても大事に思ってますもん!」
杏「そうか。」
腕時計に視線を落としている桜は思わず漏らしてしまった杏寿郎の黒い笑みに気付かない。
杏「そうだ。明日はどこへ行こうか。」
基本的に部活のない日曜は杏寿郎と桜にとってとても大事な曜日となっていた。
それを聞いて桜はそれまでの話題を忘れ、うーんと首を傾げる。
「そうだ!スパ施設に行きたいです…!友達がカップルで行って良かったって言ってたんです!」
杏「うむ!決まりだな!!ではベタだがお台場まで行こう!そうだな、午前から行ってのんびり過ごし 疲れを癒やしたら、夜はまた別の所だ!」
「わ……相変わらず決断が早いですね。夜かあ…前に言ってた夜デートですか?何をするんですか?」
杏寿郎はそう問われるとにこっと良い笑顔を浮かべる。
杏「君は俺に全て任せて楽しみにしていてくれ!!」
その笑顔と頼もしさに桜も笑顔を浮かべた。