第75章 とある日曜日
「わ…!そっくりですね!!うれしい……。」
杏「うむ!俺も通り掛かった店で見つけて思わず勝手に入ってしまってな!後で悲鳴嶼先生に叱られた!!」
「ふふ、見たかったです。」
そう言いながら桜はリボンを髪に付けてみる。
杏寿郎にとっては何十年も写真で見てきた大正時代の桜に見え、思わず席を立って近寄ると無言で抱き締めた。
「杏寿郎さん……?」
杏「……昔を思い出す。君は記憶が無い時もこの色を特別に思ってくれていたな。俺にとってもそうだ。相変わらずとても似合っているぞ。……毎日付けてくれ。」
その言葉に桜は柔らかく、そして酷く優しい表情を浮かべると『はい。』とだけ答えた。
―――
そして翌日、桜は杏寿郎が合宿先からの電話で話した通り ハーフアップにワインレッド色のリボンを付け、杏寿郎の車で出勤した。
早く噂が立って欲しい杏寿郎は相変わらず朝の挨拶の際に窓を開け続け、その時 桜の髪型を見てしまった生徒も何人かいた。
杏寿郎が恋人に指定した髪型と、助手席にいた女性の髪型…この2つが揃えば噂は爆発的に広まり、更に次の週には2年前の画像も出回り始めた。
「………………杏寿郎さん、何かしました……?」
女生徒達に散々絡まれ続けた桜は土曜の部活帰りの車の中で杏寿郎にとうとうそう問うた。
しかし嘘が上手くなった杏寿郎は眉を寄せて考えるような顔をした。