第74章 ※力加減
「………………杏寿郎さん……?どうしたんですか……。」
そう問われると杏寿郎は桜の手首をそっと撫でる。
桜はそれに促される形で視線を落とし首を傾げた。
「これ……色が変わってる…………?」
その不思議そうな空気から桜が今まで隠して治していた訳ではないのだと知り 杏寿郎は小さく息をついた。
杏「桜、本当にすまない。この痣は俺が付けてしまった。君の手首を強く掴みすぎたようだ。」
「へえぇ…杏寿郎さんの力って現代でもやっぱりすごいんですね。」
特に痛みを覚えなかった桜はそう言って笑った。
改めて目を遣ればそこの "痣" とやらは青紫になっている訳ではなく、ただの薄桃色だ。
「それより私寝ちゃったんですね…。杏寿郎さんが帰ってくるのをすっごく楽しみにしてたのに勿体ない…今何時ですか?」
杏「…………21時前だ。」
予想より早かった為か桜はパッと顔色を明るくさせて上体を起こすと杏寿郎を抱き寄せる。
「お帰りなさい。すっごく寂しかったです。…お帰りなさい!」
杏「……桜、謝らせてくれ。俺は君を壊しかけた。手首にもこんな痣を付けてしまった。本当にすまない。」
「………………壊しかけた?」
杏「ああ、激しく抱きすぎて君の意識を朦朧とさせた挙句 気絶させた。」
それを聞いて桜は驚いた顔をして眉尻を下げた。