第74章 ※力加減
桜が静かに眠り始めると杏寿郎は漸く大きく息を吐き、反省に眉を寄せながらスーツをハンガーに掛け 風呂へ向かった。
杏(久しぶりな上に いつもよりずっと体重を掛けた重い突きを最初から最後まで続けてしまった。大正時代の時と違って 桜の体はセックスの時でも弱いのだな。気を付けなければ…俺の手で壊してしまう…。)
結局 杏寿郎は湯に浸からず、早々とシャワーを浴び終えるとすぐに寝室へ戻った。
そして穏やかに眠る桜を見てほっと息をつく。
しかしふと目を遣った桜の両手首についてしまっている痣を見つけると目を見開き固まってしまった。
杏(…………まさか……俺の手形か……?今まではこのような跡を一度も見た事が無い。……桜は俺に隠しながら治していたのか。)
杏寿郎は桜の手首をそっと撫でると、その華奢さと自身の手の大きさに眉を顰める。
杏(………………本当に、俺が壊してしまう。)
―――
「………………………………。」
桜は目を覚ますと今が何時で、何曜日なのか分からずぼーっとしたまま杏寿郎が居る筈の隣に目を遣る。
しかしそこに杏寿郎がいない。
(ああ、そっか。合宿に行っちゃってるんだった……。)
「杏寿郎さん……。」
杏「……起きたか…………。」
声は桜が向いた方と真逆から聞こえた。
桜が目をパチリと開いて振り向くと床に膝をついた杏寿郎が眉を顰めて深刻そうな顔をしていた。