第14章 初めての街
「杏寿郎さん!!!」
杏「なんだ!!」
「目隠し!まだ取っちゃだめですか!!」
(さっき付けてた時間より長い気が…。)
杏「む!すまない!失念していた!!」
杏寿郎は ザザッと音を立てて止まると桜を下ろし、はらりと布を外してくれた。
「ありがとうございます。」
そう言いながら桜はきょろきょろとあたりを見渡す。
「…人……。」
その道には人がちらほらと歩いていた。
道行く人々は皆 桜の姿を見るとビクッとして立ち止まる。
それを見て桜もピーンッと尻尾を立てて固まった。
(あ、あわわ…。)
さらに左を見ればなかなかに大きな道が並行するように通っているのが分かる。
「…っ!すみません!人のいる所で立ち止まらせてしまって…!!」
桜がそう慌てると、杏寿郎は眉をきりっとさせて笑った。
杏「構わない!お館様も仰っていたが、俺がいるうちは堂々としているといい!もし歩きたいのならここをしばらく歩こう!家まではつけられない様に俺が担ぐが、それでもいいだろうか!」
「…は、はいっ!ありがとうございますお願いします嬉しいですっ!!!」
桜は興奮して一息でお礼を言った。
そしてスッスッと大股で歩く杏寿郎の隣をタッタッと軽く走りながら大通りへちらちらと目を向ける。
(向こうはお店…たくさんある……。)
杏「大通りへ出たいのか!!」
「ふあっ!!」
(変な声出ちゃった…!!)
桜は口をきゅっと結び、恥ずかしく思いながらも素直にこくりと頷いた。
杏「そうか!あちらに美味しい定食屋があるのだ!行こう!!」
そう言うと杏寿郎は大通りへ続く細道にずんずんと入っていく。
「…えっ……あ!はい!!」
桜は緊張でばくばくする心臓を抑えるように深呼吸をしてら杏寿郎の後を追った。