第73章 二人の成敗
(やめさせる、かあ。生半可な覚悟じゃこういった火は消えそうにないな。妥協できるところを探して多少は身を削りながら…、)
桜は寝る前にあれこれと考え寝付くのが遅くなってしまった。
駒校では特進クラスと普通クラスがある。
筍組は特進ではなく 関係の無い事であったが、特進クラスには春に合宿があった。
そして桜は同行せず、杏寿郎は同行する事になっている。
杏寿郎から見て桜の対策は上手くいっているとは到底思えず、被害に遭っている噂をちらほら聞いていた為 気が気ではなかった。
だが、仕事となればそうも言っていられない。
杏「君が真面目に考えて行動している事は伝わってくる。だが彼等は複数いて、尚且つ君に対して十分な力を持つ "男" だ。俺も把握出来た生徒はいるが全員ではない。 "残していく" ことになる。このままエスカレートしたらと思うと……、」
「杏寿郎さん、大丈夫。心配しないで。大丈夫なの。」
杏「……………………君を襲うような男がいたら…俺は生徒だろうと殺してしまいそうだ……。」
「………………………………。」
杏寿郎は憎む気持ちとその様な気持ちを生徒に抱く自己嫌悪から酷く苦しそうな顔をしていた。
桜はそれを大きな目で見つめ、血が滲みそうなほど固く拳を握る。
(……杏寿郎さんに…こんな顔をさせてしまうなんて…。)
それから杏寿郎は『どうか無事でいてくれ。』と何度も言ってから合宿の初日、早朝に家を出て行った。
(……私もやれる事はやってきた。もうあんな顔はさせたくない。…させない。)
そう思った桜の顔には異常なほどに何の色も浮かんでいない。
その代わりに瞳の中にはかつて弟や杏寿郎を傷付けた者へ向けた鋭い棘のある荒々しい色が浮かんでいた。