第72章 始まる学校生活と懸念
「もちろん。私に出来ることがあればやるので遠慮せず言ってね。」
部長は指導と言ったが、実際の所 桜の実力を見たかったのだ。
桜は自身の楽器ケースを開くと頭部管だけを手に取って吹きだす。
その音色だけでフルートの部員は目の色を変えた。
楽器を組み立てると桜は音階を上がり下りして指を慣らしていく。
そして挨拶をする様に先程 部員達が吹いていた際に耳コピした校歌をワンフレーズだけ軽く吹いた。
演奏を終え口を楽器から離すと両手で持ってフルートパートの女生徒ににこっと微笑む。
「じゃあ、私はこちらの子を教えるね。」
女生「は、はい!!よろしくお願いします!!」
そのやり取りをこっそりと盗み見ていた部員達はやっとまともな指導者を見つけて目を輝かせたのだった。
「あはは、大丈夫かな?ほら、お水飲んで。フルートはほとんどの空気が出てっちゃうから酸欠になっちゃうんだよね。私も最初は大変だったよー。」
桜はいつの間にか大量に用意していた水のペットボトルを目を回している生徒に手渡す。
桜目当てでフルートの体験に来た生徒は桜の笑顔に毒気を抜かれ、皆真面目に取り組んでいた。
それ故に部長は困った顔をする。
不真面目な生徒が入部してしまった場合、迷わず他のパートに入れて飽きて辞めるまで待とうとしていたからだ。