第72章 始まる学校生活と懸念
「おはようございます!!」
音楽室へ入ると桜の纏う空気はしっかりとしたものに一変する。
それぞれの席で楽器を吹いていた生徒達は一斉に立ち上がるとまだよく知りもしない桜に向かって『おはようございます!!』と挨拶を返し、バッとしっかり頭を下げた。
桜は指揮台に縮こまりながら座っている響凱の隣に立つとにこっと笑う。
「高校からは転校してしまいましたが中等部まではこちらでフルートをやっていました。高校は成華学園高校で、大学でも管弦楽部に入っていました。副顧問として微力ながらお手伝いをさせて頂きたいと思っています。皆さん、よろしくお願いします。」
そう挨拶すると皆ハッとした顔をしてから『よろしくお願いします!!』と声を揃えた。
強豪であるその高校名を知っていたからだ。
桜は挨拶を終えると部長にバトンタッチする。
その間も響凱はずっと縮こまっていた。
部長の宮下 陸という男子生徒は入部希望者を半分に分けて順番に中へ入ってもらい、2, 3年全員による演奏を披露した。
その迫力に中等部で吹奏楽部だった経験者も目を大きくさせる。
(気持ちの良い演奏…。響凱先生が逃げている間は部長さんが指導していたのかな……。)
演奏が終わるとテキパキと一部の椅子を部室に片し、パート毎に楽器体験を始める。
陸「……あの、先生も楽器体験に参加してご指導して頂けないでしょうか!」
部長の言葉に部員が桜を振り返った。
桜は余裕のある笑みを返すと頷く。