第72章 始まる学校生活と懸念
「先生、私中学から大学までフルート吹いてたんです。大学では管弦楽部でしたが少しは役に立てるかと……一緒にがんばりましょう!」
その言葉に響凱はやっと顔を上げると眉尻を下げながらも頷いた。
お昼を挟んでオリエンテーションが終わるとその日はもう授業もなく部活の体験入部が始まる。
桜は部活の活動場所へバラける前、杏寿郎に『帰りはきちんと良い子で待っているんだぞ。』と耳打ちされ顔を赤くさせながら持って来ていた自身のフルートを手に音楽室へと向かった。
「わ……すごい人数…………。」
桜が音楽室から溢れる生徒達を見てそう独り言を言うと生徒達が振り返る。
桜は思わず肩を跳ねさせた。
吹奏楽部は合奏の様子を見せようとしていたらしく、椅子が大きな扇状に並べられていて入れる生徒の人数が限られてしまっていた。
とても60名は入りそうにない。
「ご、ごめんね、私は入らなきゃいけないんだ。」
そう言いながら異常な注目を浴びつつ桜は人混みを掻き分けて音楽室へ向かっていく。
すると途中で尻を揉まれ、桜はビクッと体を震わせた。
(き、気のせいだよね。こんな所で変なことする生徒はいないはず…。)
そこで桜が震えるだけ震えて反応も注意もしなかった事を一部の男子生徒はきちんと知ってしまった。