第72章 始まる学校生活と懸念
部長が軽く挨拶をし、活動内容を説明するとすぐに演奏が始まる。
(うん、上手だ……!!)
桜が駒校の中等部にいた時も吹奏楽部のレベルは高かった。
部員は短い曲を演奏し終えるとバッと一斉に立ち上がって頭を下げる。
そして手際良くパイプ椅子を持って退場して行った。
(私が在学していた頃、副顧問の先生はほとんど参加していなかったけど私は積極的に関わりたいなあ。一応大学まで10年間フルートをやっていたし…。)
その時、司会の放送部の生徒が顧問と副顧問の名を述べた。
顧問の先生は響凱先生と言うらしい。
そしてやはり新しい教師であり、早々から目立っていた桜の名を聞いた生徒達はざわついた。
それを実弥が睨んで黙らせた。
そして杏寿郎がその反応を見て心配した通り、吹奏楽部を希望するミーハーな生徒が増えたのだった。
―――
「60名……ですか…。」
吹奏楽部の部員は2学年で60名ほどであった。
1学年でその数は明らかに多い。
加えて吹奏楽部は高等部から入るには敷居が高い部活だ。
それなのに約30名は新しい希望者である可能性が高い。
響「小生は吹奏楽について詳しくない上に顧問になって日が浅い…。こんなに熱意のある生徒を教えられる気がしない……。」
挨拶をしてみると少し怖そうであった印象とは異なり、響凱先生は気弱でネガティブな先生であった。
桜はしゃがみ込んでしまった響凱に合わせて慌ててしゃがんだ。