第72章 始まる学校生活と懸念
それを見て杏寿郎は桜の価値観を変えさせるべきか悩み、眉を寄せた。
杏(古風な考えであれば家庭に入る際 色々とすんなり行く気もするが、俺ばかりが優先されるのは我慢をさせているようで心苦しいな。)
「お待たせしました!」
戻ってきた桜は少し焦っていたが、それでもどこか嬉しそうであり 杏寿郎もそれを見て頬を緩めた。
杏(…………暫くは様子を見よう。)
杏「うむ!頂きます!!」
「はい!いただきますー!」
―――
「だ、だめですよ!1人で行きます…!」
杏「行き帰りも側に居ると言ったろう!!」
「ここからだと学校近いし徒歩…ですよね?誰かに見られます。だめです。」
杏「それなら車で送る。とにかく1人で通勤は駄目だ。出来る限り俺から離れないでくれ。部活動が始まってからも必ず一緒に帰るぞ。」
「そんな……早く終わったらお夕飯の支度しなきゃ、」
杏「その話はまた後でしよう。とにかく今日は乗ってくれ。」
「あぅ……。」
桜は勢いに流されると杏寿郎に手を引かれるまま駐車場へ向かった。
そんな桜の腕には可愛くも目立つほど輝く腕時計があり、杏寿郎の胸にも普段の雰囲気とは異なるネクタイピンがある。
バンッと運転席を閉めてシートベルトを掴む杏寿郎をチラッと横目で見つめると桜は少し頬を染めた。