第72章 始まる学校生活と懸念
「杏寿郎さん……。」
寝室へ入ると桜は敢えて大きな声を出さず、そっと歩み寄って朝日を浴びてきらきらと光る綺麗な髪を梳いた。
そして床に膝をつき、顔を近付けると起こさないようにそっと額にキスを落とした。
(前の杏寿郎さんだったら気配で起きちゃってただろうな……。)
杏「良い朝だ。君からのキスで目が覚め、1番に君の顔が目に入り、朝食の香りまでするとは。」
「え…っ」
桜は薄く開いた目のままの杏寿郎に微笑みかけられると その色っぽさから赤面した。
「………あの………朝ご飯できてます。」
杏「手伝うと言ったろう。一緒に起こして良いんだぞ。」
「旦那さんになる人をあまりキッチンに立たせたくないんです。」
杏「むぅ。」
杏寿郎は上体を起こして頑なな桜を抱き寄せるとお返しをするように額へキスを落とす。
そして強くぎゅっと抱き締め直してから体を離した。
杏「では冷めないうちに頂こう。」
「はい!」
杏寿郎が席に向かうのを見ながら桜はキッチンへ戻り、杏寿郎用の大きめな茶碗にご飯を盛って杏寿郎の前に運ぶ。
「どうぞ、召し上がれ。」
杏「……?…君も席に着かないと俺は食べ始めないぞ。」
そう言われると桜は慌てて自身の分も用意しに行った。