第2章 大切な記憶
桜は臨時でとびとびに置かれた意味のない柵を見て愕然とした。
(あ、あんなの……!隙間開けて置いてたら意味ないじゃない…!)
次の瞬間、桜が思ったことは
―――しまった
だった。
桜は昔から不器用だと自覚していた。
よく気持ちが先走って転んだし、嘘も演技も下手、そして一個のことに集中すると周りの声が聞こえなくなったり…。
でも、今回のはそれどころではない。
桜は助けようとして橋から身を乗り出していた。
片膝は手すりの上に上がっている。
「あ…っ!あぶな…ぃっ」
(…っ!…振り袖で飛び込んだら水を吸った布の重さでぜったい溺れる…!!)
我に返って慌てて踏み止まろうとした。
だが、乗り出しすぎた体は川へ吸い寄せられるように傾く。
―――ズルッ
「……ッッ!!!!!」
そのまま手が滑り、桜は呆気なく橋から落ちてしまった。