第71章 続く再会
「杏寿郎さんと私が同時に同じ香りを纏ったら目ざとい子には分かられてしまいます。それが狙いなのでしょうが私は賛成できません。」
杏「………………桜……、」
「う……そんな顔しないでください………。」
桜はお預けを食らった大型犬のようにしゅんとしている杏寿郎から目を逸らすと女性用のシャンプーを手に取る。
「もちろんこれを使うのもなしですよ。もう それこそあからさまです。」
杏「……むぅ。では俺からも君に見える何かをプレゼントしたい。」
久しぶりに食い下がる杏寿郎を心の底では楽しみつつも困っていた桜はやっと出た妥協できる案に安堵の息をついた。
「見えるもの…。アクセサリーは駄目ですし……。」
杏「うむ!腕時計だな!!」
「ね、ネクタイピンと釣り合いません!じゃ、じゃあ私も腕時計をプレゼントします…!」
桜が眉尻を下げて困った顔をすると杏寿郎はここぞとばかりに柔らかく余裕のある笑みを浮かべた。
杏「プレゼントしてくれると聞いてからずっとネクタイピンを楽しみにしていたんだ。約束したろう。そちらを買ってくれ。」
「で、でも……、」
杏「桜、俺は君がくれる物なら何でもとびきり嬉しい。」
そう言うと杏寿郎は桜が手にしていたシャンプーと棚にあった同じ種類のコンディショナーを買い物カゴに入れ、桜の手を掴んで会話を終わらせるように歩き始めてしまったのだった。