第71章 続く再会
しかし出るより前に杏寿郎にまたもや腕を引かれる。
「……わぅっ」
杏「まだ良いだろう。君の言う通り8時で十分だ。それよりももう少し君とこうしていたい。……だめか?」
そうお願いする言葉に反し、杏寿郎は誘うような大人の笑みを浮かべて桜を見つめていた。
それを見ると桜は赤くなりながら素直に杏寿郎の胸に顔を埋める。
「…………………杏寿郎さんが格好いい……。」
消え入りそうな声と言葉に杏寿郎は眉尻を下げて笑った。
杏「自慢の恋人にそう思ってもらえるとは光栄だな!」
「杏寿郎さんはご自分がどれほど魅力的か分かっていないです。」
杏「そうか。ではその魅力とやらを教えてくれ。」
さらりとそう返されると桜はグッと言葉に詰まる。
「………………全部です。」
杏「大きな声か?」
杏寿郎はわざと天元にいつも嫌な顔をされる点を挙げた。
すると困った顔をした桜は胸から顔を離し、やはりベッドから出てご飯の支度に行ってしまおうかと迷い出した。
それを感じ取った杏寿郎は桜の頭を優しく撫でてからもう一度自身の胸に顔を埋めさせた。
杏「すまない、大人気無かったな。格好いいと言われたら嬉しくて君にどう思われているのかもっと知りたくなってしまった。気が向いた時に教えてくれ。それより今日の予定だが…、」
またしてもさらりと場の空気を操ってしまった杏寿郎に桜は流され、今日のお出掛けについて呆気無く和やかに話し始めてしまったのだった。