第70章 お許しと引っ越し
「杏寿郎さん、まさか…、」
杏「料理だけはどうしても上達しないんだ。まず火が言う事を聞いてくれない。」
「火が…言う事を………?」
そう言いながら昔 千寿郎が杏寿郎に火を使わせなかった事を思い出した。
しかし見れば高そうな炊飯器もあり、料理をしないにしては大きすぎる冷蔵庫、鍋、フライパン、その他諸々の細かい調理器具まで揃っている。
「杏寿郎さんっ、私作ります!あちらでは千寿郎くんにほとんど任せっきりでしたし…。」
その言葉に杏寿郎の表情は一気に明るくなる。
そしてぎゅっと桜を抱き寄せると頭に頬擦りをした。
杏「とても嬉しい!!新婚生活そのものだな!!!」
「もう。結婚はまだしてない事をきちんと心に留めておいて下さいね。職場で気持ちが先走って『俺が夫だ!』とか言っちゃだめですよ?」
桜が少し笑いながらそう言うと、まさに結婚した気になっていた杏寿郎はすぐに返事を出来ず体を揺らして固まった。
桜はその反応で杏寿郎の考えを察すると少しこれからの仕事に対して不安を覚えたのだった。
―――
(さつまいもは欠かせないよね。それから鯛の塩焼きにも『わっしょい』って言ってたから欠かせない。あとは季節の食べ物が好きって言ってたな。筍、ホタルイカ、ウド…。筍の炊き込みご飯にしてさつまいもはお味噌汁に入れよう。ホタルイカは半分は甘めに煮て小鉢で出して、もう半分はおつまみとしてウドとぬた和えに……後は…、)
桜は大体を決めると後はスーパーで安くなっているものを見ながら献立を決める事にした。