第70章 お許しと引っ越し
杏「そうか!!君がそう思ってくれて俺も心から嬉しく思う!では荷解きをしよう!!」
「はい!」
―――
杏「…そういえば指輪はどうするつもりだ?」
「私はネックレスにしてシャツの中に隠しておこうと思います。杏寿郎さんにも長めのチェーンあげましょうか…?」
杏「むぅ。」
杏寿郎の不満気な声を聞いて桜は少し困ったような顔をしながら振り返った。
「杏寿郎さん、まだだめなんですよ。私達はまだ恋人で、恋人という事でさえ職場では…特に生徒さんの前では見せないようにするべきなんです。なのでこの結婚指輪なんて以ての外です。籍を入れる前に見せびらかすものではありません。」
その言葉に杏寿郎は眉尻を下げて何とも切ない顔をした。
すると桜はあからさまに動揺する。
「そ、そんな顔してもだめです!歳上のその顔は逆に破壊力が…!前よりも威力が増してます…っ」
脳内が『可愛い』で満たされてしまった桜はそう言いながら杏寿郎の顔を両手で覆った。
杏「桜…、では揃いでなくても構わないので何か見える所に付けられるものが欲しい。」
杏寿郎の元気の無いくぐもった声を聞くと桜は少し弱ったような表情をしつつも考えるように眉を寄せた。
そして視線を戻すと手を退ける。