第70章 お許しと引っ越し
杏「やっとだ。やっと……やっとまた君と過ごせる……。」
それを聞いて桜は今日から始まる同棲が杏寿郎にとっては前世から何十年と待ち望んだものであり、決して急なものではないのだと気付かされた。
「……杏寿郎さん、今日はここに泊まりませんか…?最後の機会になりそうですし……。」
早くもっと深く触れたくなった桜の言葉を聞いて杏寿郎は漸くそこが桜の部屋であると認識し、周りを見渡した。
そして桜らしく可愛らしい部屋の内装に不覚にも脈が速くなってしまった。
杏(何故今まで気が付かなかった。何やら良い匂いもする。だがベッドはシングルだろう…悩ましいな。)
杏「桜、君が2人ならシングルベッドに収まるだろうが俺とでは…、」
「あ、セミダブルです!おっきな抱き枕と寝てたので……きついでしょうか…?」
杏「一晩車を停める場所を探して俺の下着と服を買いに行こう!!」
「私の貸しますよ?」
桜がふざけてそう言うと杏寿郎は一瞬笑顔のまま固まる。
そしてすぐに『入る訳が無いだろう!!!』と何故か大きな声を出した。
「下着はコンビニで売ってますが……、あとはもう少し遠くへ行かないとなさそうです。」
杏「そうか。体は大丈夫か?いつでも俺が運ぶので疲れたらきちんと言うんだぞ。」
「本当に大丈夫ですよー。」
そんな会話をしながら2人は仲良く手を繋いで買い物をし、杏寿郎が必要だと思った物を一通り揃えてから帰宅した。