第70章 お許しと引っ越し
勇「……で、では1つ……。曽祖父がよく言っていたんです。『お前の未来の娘は私の妻にとてもよく似るだろう』、と。水琴さんは……桜に似ていたのでしょうか。」
「すっごく似てたよ!背も声も顔も!」
杏「全く似ていませんでした!!」
ユキに訊くより早く2人が答える。
2人は意見が割れると眉を寄せて見つめ合った。
杏「あの澄ました微笑みを見たろう。水琴さんは君のように愛らしい笑い方をしない。」
「か、顔の構造の話ですよ!私ぎょっとしましたもん。水琴さんも驚いてました。頼勇さんだって重勇さんだって私のこと水琴さんだと勘違いしてたし…。そうだ!お父さん、水琴さんを助けた煉獄様は杏寿郎さんなんだよ!」
2人が出会った時代が丁度その若い頼勇が生きていた時代なのは考えればすぐに分かったが、いざ目の前でリアルなエピソードを話されると勇之はまた呆然としてしまった。
勇「…杏寿郎くんが煉獄様………では、重勇さんを助けたのは杏寿郎くんの…、」
杏「はい!父の槇寿郎です!!父は重勇さんの歓迎をこそばゆく思ってなかなか一ノ瀬屋へ足を運びませんでしたが、俺は任務が無い時も桜と利用させて頂きました!中心に咲く桜の木が見事で……、ああ、だがあそこで君とすれ違った時があったな。君が俺達を遠ざけ自棄になって姿をくらまそうと…。」
「急に声低くするのやめてください……。」
勇「……一ノ瀬屋を…………利用したのか。」
ここまで話されると勇之の目には輝きさえ浮かんでいた。