第70章 お許しと引っ越し
杏「浅い関係でいるつもりはないのでお父様が起きられましたら全てお話しします。」
勇「起きている。それからまだその呼び名は許していない。」
「あ、盗み聞きはいけないよ、お父さん。」
桜が少しだけ叱るような声色を出すと勇之は漸く寝かされたソファで上体を起こす。
そしてそろそろと腕を上げて2人の指輪を指差した。
勇「……杏寿郎くんが悪くないのは…よく分かった。桜が迷惑を掛けてすまなかった。……だが、それはまだ早いと思うんだ。桜はまだ22歳で就職したばかりなんだぞ……。」
「あ!これを見て倒れたのね…ごめんなさい。これは…これは…………これって何指輪なのでしょう。」
杏「………それは勿論…いや、確かに少し複雑な指輪ではあるな。それを説明する為にも過去について話す必要があるようだ。」
その言葉に勇之と由梨が首を傾げると杏寿郎は勇之に席に着いてもらってから前世についての話をし始めた。
勇之は理系の道へ進んだ桜に影響を与えた張本人で物理学科の大学教授だった。
それ故に現実主義であり、すんなり受け入れた由梨とは違って聞き終わっても眉を顰めたままだった。
勇「100年前に撮られた2人に似ている写真や煉獄様に関する書物は見た。だが、2人の祖先がそっくりの顔をしていただけ、という説の方が現実的だ。」
「証拠かあ……写真や動画も大正時代と繋がるものは映ってないし…、指輪の文字もインパクトに欠けるのかな……。」
勇「人1人が時空を超え、更に生まれ変わりだぞ。流石に……、」
「…………非科学的……じゃあ、ユキ……様に会いに行こう!2人にはずっと言っていなかったけど、私 癒猫様が見えるの。」
由「え……え、えぇ!?どんなお方なの?」
由梨は目を輝かせる。