第69章 桜と記憶と再会
槇「何でお前は……どんな噂だ。」
「違うんです、杏寿郎さんは今回本当に悪くなくて、私と一緒にいたのを目撃した女生徒さんが違う女の先生と見間違えて噂をしたんです。それで私が勘違いを……、」
槇「だが、こいつの性格や愛情表現は分かり易いだろう。疑いようなど無い筈だ。」
「だって……、お付き合いしてないのにデート初日から手を出されたんです。慣れた感じで。」
桜が拗ねたように言うと杏寿郎は口角を上げたままギクッと肩を揺らした。
杏「すまない、年上になれて嬉しかったんだ。それから君への気持ちが溢れて我慢ならなかった。その結果があれだ。大正時代でも俺は恋仲になるより前に気持ちが先走ってたくさん手を出していただろう。」
瑠「杏寿郎!!!」
流石に瑠火が厳しい声色を出した。
瑠「了承を得られていないうちにすればそれは痴漢と変わりませんよ。」
その言葉に杏寿郎がショックを受けた顔をする。
杏「……すまなかった、桜。確かに俺は…痴漢だ。」
桜は眉尻の下がった杏寿郎を見つめながらその言葉の内容に口をむずむずとさせた。
「…………ふふ、許します。お義母さま、ありがとうございます。」
そう言うと瑠火は微笑んで桜の頭を撫でる。
瑠「念願の娘。絶対に逃しません。」
杏「俺も逃がす気はありません!!」
(外堀が……。)
桜はそう思いながらも元より逃げる気などさらさらなかった為 只々微笑んだ。