第13章 お館様
杏「そういえば、君の力は初めて見たな。」
再び担がれ移動していると、杏寿郎は若干静かめな声を出した。
「そう…ですね。」
(そういえば…見てもいないのに信じてくれたんだ…。)
そう思うと桜は嬉しくて心が温かくなった。
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またしばらくしてから、杏寿郎は急にザザッと足を止め桜を下ろした。
そして手ぬぐいを取り出し桜の目に当てる。
杏「すまないが、ここからは目隠ししなければならない。許せ。」
「あ!はい!平気です!!」
そう言いながら姿勢を正すと杏寿郎の小さく笑う声が聞こえ、桜はまた担がれた。
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杏「着いたぞ!!!」
目隠しを外されると桜は目をぱちぱちと瞬かせた。
「産屋敷邸……親方様、産屋敷耀哉さまの……お家……お屋敷………お城…………ご立派!!!」
驚いている桜を横目で見て愉快そうに笑うと "こっちだ!!" と言い、杏寿郎は先を歩き出した。