第13章 お館様
桜が見ていられなくて声を掛けようか迷ったその時、
杏「うむ!大変美味しかった!!」
そう言って杏寿郎は ぱあっといい笑顔を見せた。
同時に胸をなでおろす桜と店主。
杏「では!土産にあと五十本頂こう!!」
「杏寿郎さんッ!!!早く行きましょう!!!」
桜は思わず大きな声を上げた。
姿は見せないようにしたが、流石に口を出さずにはいられなかった。
杏「むぅ?しかし桜も食べたいだろう!絶品だぞ!」
「じゃあ一本でいいので…!それから店主さん、お団子を用意する前に目を閉じてそちらの椅子に座っていただけませんか…?」
首を傾げつつも、杏寿郎の大きな目にずっと見つめられるので店主は すとん、とおとなしく座った。
桜はそろそろと近付き、店主の背中に手を当てる。
「すみません。悪気はないのですが、周りが見えなくなるときがあるようで…。」
そうこっそりと耳打ちすると桜は小さく笑って背中を優しく撫でた。
するとふわっと体が楽になり店主は目を見開く。
杏寿郎はその様子をただ目を大きくして見ていた。