第69章 桜と記憶と再会
杏寿郎は玄関を出るなり桜を横抱きにすると下や周りをキョロキョロと見てから手すりにトンッと乗り、そして飛び降りた。
(……うそうそっ)
杏寿郎は桜が叫ばないように口をガッチリと手で塞いでいる。
地面が迫って桜が耐え切れずに目を瞑ると杏寿郎の肺からゴォォッという音がし、浮遊感の後に杏寿郎が地に降りた音がした。
杏「流石に痛いな…………乗ってくれ。」
「………。」
強く瞑っていた目を開くといつの間にか駐車場に来ていた。
桜は戸惑いながらも素直に車に乗り込む。
杏寿郎も乗り込むとすぐに車を出した。
杏「君を抱えて走りたいところだが今の俺の体ではほんの少し使っただけでも体が悲鳴を上げる。情けないな。」
「あ……今のが呼吸、ですか…………?」
杏「そうだ。いつもはあの様な行儀の悪いことはしていないぞ。今は緊急の用があったのでな。」
(桜……緊急の用………。2年前にも行こうって言ってた。約束をしたから行こうって。100年前にした約束……。)
杏寿郎は実家のガレージに車を停めると桜を再び横抱きにして走り出す。
大正時代の時に比べたらその速度は流石に遅いが、今の杏寿郎にとっては全速力だった。