第69章 桜と記憶と再会
「な……何で、知って……、」
杏「昨夜下着を取る際に偶然タグが見えたんだ。」
杏寿郎は途端に余裕を失くす桜の頭を謝るように撫でると そっとキスをする。
杏「ありがとう。昔も君の抱擁に随分と救われた。変わらずにいる事をとても嬉しく思う。」
桜はそれを聞いて少し首を傾げたが 杏寿郎の穏やかな表情を確認すると ほっとしたように微笑んだ。
そしてその後 桜は昨夜の事を尋ね、自身の失態を聞くとベッドに正座をして頭を下げた。
「お外、少し明るくなってますね。」
杏「ああ、…………5時だな。」
杏寿郎は桜の向こうにあるスマホを手に取るとそう言った。
そしてはたと動きを止める。
「……………………?」
桜が首を傾げると杏寿郎はガバッと勢い良く起き上がり着替えはじめた。
「あの、」
杏「桜、桜を見に行く。今すぐ……"早朝" の桜だ。約束を果たしてくれ。」
杏寿郎は余裕を失くしながらそう言うと洗濯機の中で既に乾いている桜の下着やシャツを持ってくる。
桜は杏寿郎のただならぬ様子から急いで着替えて後を追い玄関へ向かった。