第69章 桜と記憶と再会
杏「桜!桜!!水を飲めるか!!」
そう言って頬を撫でると桜が小さく呻く。
反応があった事に杏寿郎は少し安堵するも桜が目を開けるまで必死に名を呼び続けた。
「……ん………………、」
杏「桜!!!……良かった…からかってすまない、まず水を飲んでくれ。」
赤く、そしてぽーっとした顔の桜は素直に頷くと水をこくこくと飲んだ。
杏寿郎はそれを見て漸く深く息を吐くと桜の頭を何度も何度も優しく撫でてから脱衣所へ行き、バスタオルを腰に巻いてタオルで濡れた床を拭いた。
そして再びソファに行って桜の様子を見ると 桜はすぅすぅと小さな寝息を立てて眠ってしまっていた。
杏(もう少し話したかったのだが…。恥ずかしがりなのを知った上でからかい過ぎた罰だろうか……。)
そう思いながら杏寿郎は眉尻を下げて暫くの間 桜の頭を撫で続けたのであった。
―――
「……ん………………、」
桜はうっすらと目を開けるとぼんやりとした意識の中でよく知る、そして懐かしい熱い体温を感じてふわふわとした幸せな気分になった。