第69章 桜と記憶と再会
杏「…………体を洗ったら一緒に湯船に浸かっても良いか。昔はよく共に入ったんだ。」
「え……ぁ、」
せっかく肩まで出てきていた桜は再び赤くなるとギリギリまで湯の中へ沈んだ。
そして小さく頷く。
杏寿郎はそれに微笑みを返すと体を洗っていった。
桜は暫くそわそわとしてからそれを横目で盗み見る。
(今も体を鍛えているのかな…すごい筋肉……。私と全然違う体してる。剣道してるって言ってたな…だから腕もあんなに逞し、)
杏「なかなかに熱い視線だな。」
「ひゃうっ」
からかう声を聞くと桜はそう言ってとうとう完全に湯の中に沈んでしまった。
杏寿郎は眉尻を下げて笑いながら浴槽に肘をつき、桜が出て来るのを待った。
しかしいくら待っても桜が出て来ない。
杏「桜…?…………桜!!」
杏寿郎が腕を湯に突っ込んで桜を引き上げると桜は真っ赤な顔で目を瞑りくたりとしていた。
杏「君はどうしてそうなるんだ…!!」
杏寿郎は焦りながらそう言うと急いで桜を抱き上げてバスタオルで包み、自身は体も拭かずにリビングへ行ってソファに寝かせた。
そして手で息を確認すると桜が湯を飲んだ訳ではなく ただ酷く逆上せたのであろうと判断し、急いで水を持って来てから桜の上体を起こして意識を呼び戻すように赤い頬に手をしっかりと当てた。